はじめに
総評
ハウツー感は比較的強めで、定義されるOPENNESS=開放性と業績の相関関係についても詳しく紹介されています。組織における最大の武器である「組織風土」「人間関係」を開放性とデータでわかりやすく向上させる手法が詰まっています。
オススメの読み方
自身の日々のマネジメントを振り返りながら読み進めることをオススメします。管理職の方は担当部門を俯瞰してイメージしながら、中間管理職やOJTなどの指導役の方は具体的な部下・メンバーをイメージすることで内容がグッと入りやすくなると思います。
こんな方にオススメ!
・管理職となり現場から距離が出来始めて介入法を模索している方
・新たに組織の中で管理職や中間管理職の役割に就いた方(就く方)
・業務上大きな支障は出ていないが、もうひと段階社員のエンゲージメント向上を目指したいと考える方
著者紹介
著者の北野唯我さんは、神戸大学を卒業後大手広告代理店の博報堂に入社され、その後コンサルティングファームであるBCGを経て現在はIT×HR領域の株式会社ワンキャリアの取締役を務められています。
「人と経営戦略のスペシャリスト」とお伝えするとシンプルかもしれません。
本著は、そんな北野さんならではの鋭い視点から開放性を中心に据えた結果を出すための組織作りが紹介されています。
北野さん、もともとVoicyで配信されていたラジオをYouTubeにお引っ越しされています。
短い時間でさっと聴ける動画が数多く上がっていますのでおすすめです。
以下の動画は個人的おすすめ回でもありますサイバーエージェント人事責任者でR-25などのメディアにも人事ネタで数多く出演されている曽山さん(ソヤマン)との対談になります。
HR領域のプロフェッショナルであることがよくわかる映像になっています。
本著ではそんな北野さんの知見から、開放性から考える組織の活性化について細かく記されています。
ポイント解説「ここを読め!」
①OPENNESS(オープネス)は3つの要素で構成されている
本著の中で北野さんはオープネスは「情報の透明性・戦略のクリアさ・リーダーの自己開示性」であると述べ、このオープネスを高めるためには以下の3要素があると定義されています。
- 経営開放性:リーダーの戦略や思想がどれだけメンバーへ届いているか
- 情報開放性:メンバーが意思決定に必要な情報を集めることができる環境にあるか
- 自己開示性:メンバーが自分の個性や才能を発揮しても他者からの攻撃を受けないと安心できる状態にあるか
社会情勢の変化や職業観・キャリア観の変化など従業員が組織に対して求めるものは時代に応じて変わってきています。
オープネスとは新時代における新しい経営のコンセプトづくりの根幹となる考え方であるとされています。
②OPENNESSが業績に直結することをデータとともに理解する
本著は具体的に開放性を高めるための手法を数多く紹介していますが、それは後半の内容となります。
前半はみっちりとデータを数多く用いて組織戦略と業績の相関関係についてまとめられています。
北野さん自身がなぜOPENNESSが重要だと考えるようになったのか、その背景にあるデータから始まり、
投資ファンドや外資系金融機関が戦略に用いるAIに社員風土に関連するデータが取り扱われている事例など広範囲に渡りそれぞれの結論に対して丁寧にその根拠となるデータを横並びで示されています。
これらのデータの中で、自分の組織に当てはまるものを掴んでおくことで、後半に続く具体的な施策を、よりリアリティを持って読み進めることができるようになります。
③自分の組織の期待値と推進における壁をイメージする
【組織の期待値について】
②で紹介した通り、自分の組織に通ずるデータを掴んでおくことが重要ですとお伝えしたポイントの続編になります。
北野さんは働き方改革の場でも頻繁に取り上げられるフレデリック・ハーズバーグの「二要因理論」に基づいてOPENNESSは給与等の「衛生要因」に分類されるとしています。すなわち、何でもかんでも開放的にすることが全て良しではないということになります。組織に所属する従業員の期待値を適切に把握し、適切な範囲で上回ることのできる戦略を検討することが重要になります。
【推進における壁】
北野さんはOPENNESSを推進する道のりにおいて壁となってしまうポイントを3点紹介されています。
- ダブルバインド:言行不一致
- トーション・オブ・ストラテジー:戦略のねじれ
- オーバーサクセスシェア:成功に偏った情報共有
それぞれについても細かく紹介がされていますが、これらの壁が事前に整理されていないままでは、いくら素晴らしい戦略も浸透が難しく当然ながら成果に繋げることも難しくなってしまいます。
期待値と壁については自分の組織をイメージしながら読み進めることがポイントです。
まとめ
さて、今回ご紹介した北野唯我さんの「OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める」ですが、北野さんらしいユーモアな表現も多く最後まで楽しく読み進めることができます。
前述した通り、根拠となる豊富なデータが特筆のポイントだと感じました。特に前半部分は通勤途中や隙間時間というよりは学びの一環として時間を確保して読み進めると自分の組織とのリンクも色濃くなるのかなと思います。
新たに管理職としてスタートされる方、組織の拡大や人の入れ替わりで風土作りに悩んでいる方におすすめの一冊でした。