気持ちよく人を動かす

気持ちよく人を動かす

はじめに

総評

 外資系コンサルや企業支援時代のエピソードを交えながら「共に創るディスカッション」を成功させるための7つのスキルについて詳しく整理・紹介されている書籍です。タイトルだけでは推察できない、細かなロジックが詰まっており前半部分は若手ビジネスマンの気づきや中間管理職のおさらいとして個が意識を高めていく内容としての価値が高く、後半部分はチームを率いるリーダー・マネージャーがチームのレベルを高めるための学びとなる内容が多く紹介されています。具体的な折衝シーンをイメージでいるような事例も含まれていますので、繰り返し読みながら理解を深めることができます。また、読者特典として書籍の中では紹介されていない事例を取得することもでき、長く側で力になってくれる一冊です。

こんな方にオススメ!

・新たにリーダー職、管理職に就かれた方

・プロジェクトマネジメントに自信をつけたい方

・様々な部署や取引先との協業が多い方

著者紹介

 著者の高橋浩一さんは、東京大学経済学部を卒業後に外資系戦略コンサルティング会社での勤務を経て25歳で企業・起業研修のアルー株式会社へ創業参画されます。(取締役副社長)事業と組織を統括する立場として、創業からわずか6年で社員数70名までの成長を牽引されます。その後、2011年にTORiX株式会社を設立し代表取締役に就任されます。3万人以上の営業強化支援に携わられてきた経験などを基に年間200回以上の講演や研修への登壇、書籍の出版、オンラインサロンの運営など多岐にわたって活躍されています。

【TORiX社 HP】
https://www.torix-corp.com

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ポイント解説「ここを読め!」

①共創するコミュニケーションのために乗り越える4つの壁

 本書では、ゴールに向かって一方的に説得するようなコミュニケーションではなく、共に創っていく「共創のコミュニケーション」を成立させることが人を動かす上で不可欠であるとされています。その過程で想定される壁は大きく分類して以下の4つです。

・気を許していないので動きたくない:「関係性の壁」

→提示内容の賛否とは関係なく、相手と自分との関係性が原因となって起こる抵抗です。社外など日頃の折衝回数が少ない場合などに多いことが想定されますが、社内でも関わりの少ない部署とのやりとりなどでは発生する可能性があります。強引に説得して乗り越えることは得策でなく、相手の中にある気持ちを引き出すために適切な自己開示を駆使して乗り越えていきます。

・状況がクリアになっていないので動きたくない:「情報整理の壁」

→話の内容に対する理解がクリアになっておらず、クロージング時の保留やその先の実働における停滞などの要因になり易い壁です。検討に必要な情報を整理して可視化していくことで乗り越えることにつながります。

・これまでの経験や直感から動きたくない:「思い込みの壁」

→固定観念や先入観によるネックは非常に手強い壁になります。影響を与えている情報(過去にあった失敗など)を引き出し、掘り下げて整理を進め思考や認識をリフレーミングしていくことが重要になります。

・割に合わないので動きたくない:「損得勘定の壁」

→アクションを起こすだけのメリットを感じられない際に生じる壁です。この壁を場当たり的に乗り越えようとすることは実働結果によるこじれ(こんなはずじゃなかった、聞いていた話と違うなど)のリスクも存在します。中途半端なまま前進させるのではなく、落とし所がお互いに明確に理解できるように話をすることが重要になります。

これらの壁の存在はネガティブなものではなく、「結論を進化させてくれる材料」として前向きに捉えていくことが大切です。事前に幅広く想定をして洗い出しをしておくことで共創していく過程のコミュニケーションも質が高まっていきます。

②アクティブリスニングの3要件を満たす

 一方的な依頼でなく双方向のコミュニケーションを成立させるためには、話すスキルだけでなく相手の状況を正しく把握するための聴くスキルも欠かせません。
 本書では、相手が話し易いと感じながらその場を進めるために重要なアクティブリスニングについてもまとめられています。様々な場面で紹介される「相手と目線を合わせましょう」「声のトーンを合わせましょう」などは割愛させていただき、以下3点を紹介します。

1:「自己一致」

→聞き手の気持ちに嘘がなく純粋な状態であると相手に感じてもらうことです。「話を聞くよ」と言いながら資料やPC画面に目線を何度も落としていたりするなど現行一致していない状態では相手の心は開かれません。基本的なことですが、場を作る上では欠かせないスタート地点になります。

2:「無条件の肯定的関心」

→否定や評価をしながら向き合うのではなく、相手の存在を受け入れ、尊重する姿勢のことです。たとえ自分の意にそぐわないことでも、「そのように感じているのか」「そういう考え方・捉え方もあるのか」と受け止め、丁寧に寄り添うようなコミュニケーションで前進させることを心がけます。一方的な説得や論破はこの対極にあり理解させよう、納得させようという気持ちが前面に出るとこの肯定的関心は崩れてしまいます。

3:「共感的理解」

→相手と感情を共有し相手の立場・同じ目線で物事を捉えるということになります。表面上の言葉だけの共感ではなく、心で感じてもらえるようなコミュニケーションを意識する必要があります。相手によっては自分と立場が異なったり、向き合う問題の質が異なることも少なくありませんが、自分も経験したことだけが共感できる話ではありません。相手の話を聴き、相手の立場に立ってわからないことは深掘りしながら聴いていき、その景色を一緒に見ていく姿勢が大事になります。

③共に動くための合言葉を作る

 ポイントを抑え、壁を乗り越えて、納得のいく共創のコミュニケーションが進んでいる!と感じていたのにも関わらず、実際に動き出してみると思ったようなスピード感が出ない、停滞してしまうことがある。といった場合に考えられる要因は、”合意が緩い” ”アクションが不明確”といった点です。それらを引き起こさないために大切なポイントがあります。

「合意が緩い場合」
まずは見せかけの合意でコミュニケーションの場を終わらせてしまわないように、しっかりと相手の感情を引き出していきます。その中で心からの合意を形成するために、相手の熱量をあげていくことに注力していきます。具体的には、なぜ取り組む必要があるのかというゴールを相手自身の言葉で語ってもらえるようになる状態を目指します。細かなスキルとしては打ち合わせ中に相手が発する言葉を丁寧に拾っていき、キーワードとしてまとめておくことでゴールを自身の言葉で言語化してもらえるような関わりが重要です。

「アクションプランが不明確」
アクションプランに対する全体の受容度合い、内容の質は適切かを確認する必要があります。この点が不十分ではいくらアクションを定めたとしてもスムーズな前進とはならない可能性があります。プランを定める際のポイントは「いつ・誰が・何をやるのか」を明記した上で、それらを時間軸に並べていきます。この辺りの基本的な計画に加えてそれぞれのアクションによる「目的・想定成果物・所要時間・依頼事項・自身のアクション」を整理します。特にタイムリーなコミュニケーションが想定通りに行えない可能性の高い社外とのやり取りでは、プランの綿密さが信頼を加速させるためにも肝心になります。

まとめ

 さて、今回ご紹介した「気持ちよく人を動かす」ですが、何度でも振り返り自身のコミュニケーションを見直すために役立てることのできる一冊です。著者のコンサル活動経験エピソードだけでなく、社内での想定シチュエーションなど自身を重ね合わせて読み進めるという点でも易しい一冊です。
 若手の方々にはもしかしたら後半部分は少しだけハードルが高く感じられる内容もあるかもしれません。しかし経験を重ねたり、新たに出会う人々との時間によって、理解の深みが増す時期が来ると思います。その点含めて「長く付き合える」というご紹介になります。

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