入社1年目の教科書

はじめに

総評

 「社会人になるあなたのために」企業から内定者へ、上司から部下へ、親から子へ紹介されることも多い書籍です。海外での社会人経験を経て、帰国後は創業から大手企業の要職まで幅広く努められてきた著者が贈る「デキる社会人の教科書」とでも形容するのが適切でしょうか。非常に多くの学びがあり、読み終えたタイミングでは相応の覚悟も身につく一冊だと思います。しかし、第1刷は今から遡ること10年前になります。当時とは環境や価値観の変化があって然るべき年月が経過しています。その点を踏まえて向き合うことが肝になる一冊ですので、記事の中ではその点も解説していきます。

こんな方にオススメ!

・新社会人になられる方

・今一度基本に立ち返りたい方

・新たに部下育成に携わられる方

著者紹介

 著者の岩瀬大輔さんは、1976年埼玉県生まれ。1997年に司法試験に合格するも法曹職には就かず、インターンシップ時代に縁のあったボストンコンサルティンググループに入社されます。その後リップルウッド・ホールディングスを経て、ハーバード大学経営大学院(MBA)に留学され、当時日本人では4人目となる上位5%の成績で課程を終了されます。帰国後はライフネット生命保険の立ち上げに代表取締役副社長として参画され、2013年に代表取締役社長2018年には取締役会長に就任(2019年退任)されます。
2018年には18の国や地域に拠点を有するアジア最大手の生命保険会社AIAグループに本社経営会議メンバーとして招聘され、2020年にはスパイラルキャピタルのマネージメントパートナーに就任し、テクノロジーで業界変革や産業創出を行う企業を支援に携わられてきました。その他にもベネッセホールディングス、メドレー等の社外取締役を務められるなど多岐にわたって活躍されています。

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ポイント解説「ここを読め!」の前に…

総評にも記載の通り、第1刷発行は2011年5月で、この記事を書いている2021年10月から遡ると10年以上の月日が流れていることになります。環境も職業観も価値観も変化が生じて当然なだけの月日が流れていると言うことです。本書に関しては、「内容が時代に合っていないのでは?」「今の世代には合致しないよ」と言う声がネット上に上がっていることも事実です。しかし、それらの声は誠実かつ適切な向き合いの結果至った声であるのか、それとも浅い読み方でたどり着いていない中で目立つ部分に対する拒否反応や苦手意識から発されている言葉なのかと考えると、個人的には後者の色が強いのではないかと感じています。そのため、他の記事とは異なりますが本書に対する向き合いのポイントを項目として独立させ整理したいと思います。

①見出しに惑わされない

「宴会芸は死ぬ気でやれ」など、現代のサラリーマンには自身の体験へリンクさせることにパワーが必要な見出しは確かに存在しています。しかし、この見出しだけで書籍全体の価値を判断してしまうことは非常に勿体ないと思います。

前述の通りこの10年でも社会の変化は著しく、人間関係やコミュニケーションの在り方、更には就業スタイル・姿勢についても大きな変化が起こっていますが、筆者が伝えたい本質は大きく変化していないということを如何に汲み取ることができるかがポイントだと感じます。ビジネス関連書籍においてはどれもそうなのですが、書かれていることだけを読むのでは手段が目的化してしまい十分な効果には届きません。自身にリンクさせ解釈を深め、行動イメージを持つことでこそ真価に近づくと考えております。本書においても同様で、事例として紹介される部分だけを表面的に読むのではなく、その「本質」に対して自分なりに歩み寄ってみることが必要だと感じています。

その本質について丁寧に記載された記事がR-25(2018年)に掲載されていますので、ご紹介します。

↓↓↓

40万部超のロングセラー本に異議あり!
会芸は死ぬ気でやれ”って古くない?『入社1年目の教科書』著者の社長にツッコんだ

https://r25.jp/article/538694190796354635

それでもなお、難しいなと感じられる場合は該当する章をまずは飛ばしてみることも良いかもしれません。それぞれの章である程度内容が完結しながら進みますので学びが途切れる心配もありません。また読み直してみたいというタイミングで向き合うというのも選択の一つだと思います。

②紹介する上司や先輩が補足・助言・通訳をしてあげる

会社の上司や先輩、人事部から紹介されることも多い書籍です。ただ渡して読んでみなさいで終わりではなく、事前に少しのアドバイスを添えて贈ってあげることも有効な手段であると考えます。

俺たちの時代はもっと大変だったなどという武勇伝で葉っぱをかけることこそ時代錯誤で、それぞれの時代に必要とされたスタンスやアクションの本質を言語化し、「現代で例えるなら」と上手な翻訳ができることの方が動機付けの観点からも効果的です。

これまでを創り上げてきたビジネスマンたちが慣習として行動だけを引き継ぐのではなく、成功の本質を現代版に翻訳できることは、まさに世代を超えた経験の往還でこそもたらされるものであり、組織であるが故に提供できる成長機会でもあります。

そのような上司や先輩が、書籍でも紹介されている 35:「目上の人を尊敬せよ」 の現代版を象徴するような存在なのかも知れません。

ポイント解説「ここを読め!」

①50点で構わないから早く出せ

 冒頭にて「原則」として紹介されている内容です。人間誰しも指摘を受けることに対する抵抗は持ち合わせているものだと思います。そのためにもなんとか質を高めた状態で提出をしたいと考えることは防衛本能の観点から考えても至極真っ当なことではありますが、1年目から100点の仕事をして指摘や修正の指示を受けないことは非常に難しいことと言えます。それはこれまで積み上げてきた経験も時間も発想も、先輩上司とはどうしても埋まらない差があるため当然のことで、これから積み上げていけば良いことです。故に、自分の範疇で良いものを作ろうと必死に時間をかけたアウトプットでも評価は期待通りでないことも少なくありません。

 この時期に大切なことは、パーフェクトな仕事をすることではなく、アップグレードするために学ぶことです。そのためには情報を手に入れ、必要な人の力を借りて確度を高めていく作業が必要になります。仕事の成果には「納期×質」の原則があるため、期日に間に合わせるためには早く質を向上させるフェーズに突入していくことが大切です。期日ギリギリに質の低い(とは思っていない)アウトプットをするのではなく、期日に100%に持って行けるように早期に周囲に力を借りて取り組むことが重要です。そしてそのサイクルを何度も回しているうちに自身の中で経験値の積み上げが行われ、徐々に質が伴う領域が拡大されていくのです。

②「何のために」で世界が変わる

 仕事の依頼を受ける際、真っ先に確認が必要なことは納期です。(そもそも依頼サイドに納期の意識がないと良い仕事にはならないですが)同時に抑える重要ポイントが「仕事の目的」になります。入社して経験が限られた時期には断片的な業務の依頼を受けることも少なくありません。しかし断片的な業務はどれも何かしらのプロジェクトから切り出された一部であるということを理解しておくことが大切です。そうすることによって、ただ依頼された内容をそのままアウトプットするのではなく仕事に付加価値を加えてアウトプットすることができるようになります。

 上記は依頼をする上司や先輩においても意識しておくことが重要で、後輩・部下がいち早く成長していくためにはどのような情報を与えて業務の依頼をするのかを意識することで、単純な作業依頼だけの寂しいやり取りにはならないはずです。

③社会人の勉強はアウトプットがゴール

 ポイント解説「ここを読め!」の前に…の①でも記載させていただきましたが、学びは過程で自らをシンクロさせて、自分なりの解釈を深めて行き、具体的な行動イメージを持って進めることが重要であり、その先に実際のアクション→結果を踏まえた振り返りと行動変容までがセットであると思います。社会人というフィールドへ適応し、徐々に時間のコントロールが効くようになりセミナーや読書など自己投資に向かうという判断は素晴らしいことです。(せっかく創出した時間をダラダラと過ごしてしまう人もたくさんいます)その素晴らしいアクションを成果に結びつけるためには上記のようなアウトプットまでのイメージを持って過ごすこと、そして失敗を恐れずに行動を起こしてみることが何よりの近道です。

まとめ

 さて、今回ご紹介した「入社1年目の教科書」ですが、冒頭にも記載の通り読み進める前の準備・環境設定を周囲が行なってあげることで学びは最大化されると感じました。そういった観点から考えると、決して若手が読めばOKということではなく、部下・後輩育成の役割を担う世代(かつての若手)が自分たちの役割を正しく認識し、育成というシーンでの成果を創出するためにも役立つ一冊です。

購入リンク

研修等で活用できるワークブックも新たに発売されています。

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