自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義

自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義

はじめに

総評

 本当の自分とは?隣にいる大切な人の価値観とは?最高の人生とは?そんな共通の正解がない問いに対して向き合い、自分なりの答えを持てる「パーソナリティ心理学」について整理された一冊です。「他者を理解しようとする試みを通じて自分を深く理解できるのと同じく、自分を深く理解しようとする試みによって世界をこれまでとは違った視点から見つめることで自分の能力を今よりも遥かに引き出すことができる。」事例と様々なパターンのテストを用いてヒントを与えてくれる一冊です。

こんな方にオススメ!

・自分自身に対して深く見つめ直す機会が欲しい方

・心理学に興味を持ち今後学んでいきたいと考える方

著者紹介

 著者はパーソナリティや動機付けをテーマにした心理学分野で世界的に有名な研究者であるブライアン・R・リトルさんです。大学教育界のノーベル賞とも呼ばれる「3Mティーチング・フェローシップ」を受賞され、ケンブリッジ大学ウェルビーイング・インスティチュート特別研究員、カールトン大学特別教授を勤められています。教鞭をとられたケンブリッジ大学心理学、ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネス・スクール、カールトン大学、オックスフォード大学、マギル大学、ハーバード大学では常に満席の講義となり、ハーバード大学の人気教授に3年連続で選出された実績があります。

ポイント解説「ここを読め!」

①「パーソナルコンストラクト(個人的構成概念)理論」について考える

 世の中には数多くのタイプ分類テストが存在しますが、本書ではそのテストだけで十分にパーソナリティを理解すること(させること)は難しいと述べています。しかし、人間の行動は環境が全てだと言う考え方も対極すぎると言うのが筆者の前提です。そのような中で役立つのは「パーソナル・コンストラクト(個人的構成概念)」です。パーソナルコンストラクト=人にはそれぞれ独自の評価基準があり、その基準によって物事を予測していたり自分や他者を解釈していると言う考え方です。ここでの独自の評価基準は周囲を理解し、生きていくための便利な枠組みになる反面、時に自分や他者を凝り固まった考え方で捉えてしまう枠組みにもなり得るものとして紹介されています。
 実際に本書の中ではレストランのウェイターに対して厳しい態度で接する男性を見かけたシーンを例に挙げて説明がなされています。他者を嫌な人だと感じる際にも、様々な想像の上で評価してしまっているが所詮それらも独自の評価基準に囲まれた想像の域を超えない場合もあると言うことの解説になります。本書ではより良い生き方を選択するために活かせる「仮設を変える力」「捉え方を柔軟にするためのポイント」が紹介されています。

②住んでいる環境は「生活の質」を決める

 環境はパーソナリティと密接な関係にあり、幸福度にもたらす影響も大きいと紹介されています。「人は誰しもあらゆる人と似ていて、一部の人と似ていて、誰にも似ていない」という人類学者クライド・クラックホーンの言葉でパーソナリティの個人差を詳細に説明されています。ある人にとっては喜びをもたらす環境でも別の人にとては苦痛な場所である可能性があると言うことについても都市に関する意見を取り上げ「都市は個人主義や孤立感を助長するものであり、もっと人間同士がつながり合い親密な交流が生まれるように根本的に設計し直す必要がある」と言う外交的な意見と、「都市は人間関係の接触や刺激があまりにも多く、過負荷になるためネガティヴな影響を緩和するための戦略が必要」と言う相反する意見を整理しながら解説されています。環境パーソナリティの8スタンス(*1)を用いて、誰かにとってのユートピアは別の誰かにとってのディストピアであると言うことを改めて理解できる内容です。またこれらは現代ではSNSなどに代表されるサイバースペースでも同様であると述べられています。フィールドの違いはあれど、根本的な考え方が整理できるヒントをもらえます。

*1:環境パーソナリティ8つのスタンス

・自然志向
・都会志向
・環境への適応
・刺激の探究
・環境への信頼
・歴史志向
・プライバシー優先
・仕組みへの志向

③「パーソナル・プロジェクト」を追求する

 パーソナル・プロジェクトとは人が日々の暮らしの中で計画・実行する様々な行動そのものを指し、日常的なものから生涯をかけて取り組むものまで幅広く存在するとされています。(基本的には一時的なものではなく継続的な行動を指します)
本書の中でそのパーソナルプロジェクト(特に生涯をかけて取り組んでいくもの)が自分にとって大きな意味を持つものにするためには
・アイデンティティや価値観に一致していること
・熱心に追求する動機があること
・追求そのものに喜びを感じられるようなもの
が大切であるとされています。

生まれ持ったパーソナリティ特性とは異なり、行動そのものを指すパーソナルプロジェクトは自身で選択して変えていくことのできるものです。
慣れ親しんだ心地よい世界から未知の世界へ一歩を踏み出すその勇気を持った先に待つ結果には相応の価値が待っているとして、自分に向き合った行動選択の重要性が記されています。

まとめ

今回ご紹介した「自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義」ですが、心理学の専門書としての向き合いではなく考え方の整理に役立つポイントが多く存在すると感じました。理論の後には事例で内容を深く理解できるような展開があり、自身のクリエイティビティを図るテストや、セルフモニタリングに活用できる質問例なども多く紹介されており、タイプ分類テストなどは一通り経験をしてきて更なる自己理解に挑戦したい方にぴったりな一冊です。

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