THE TEAM 5つの法則

THE TEAM 5つの法則

はじめに

総評

 教育を受ける幼少期に始まり、就業する組織、また高齢者となってからのプライベートな交流まで人は誰しも「チーム」で活動する時間を過ごします。しかし、チームについて体型的に学ぶ機会はまだ十分になく、時には精神論や経験則のみで語られてしまうことも少なくありません。本著では、そんなチームの法則を再現性を持って活用できる内容で整理されています。

こんな方にオススメ!

・新たに管理職になられた方

・新設部門で責任者になられる方

・感覚で進めてきたチームマネジメントを見直したい方

著者紹介

 著者の麻野耕司さんは慶應大学を卒業後にの2003年に株式会社リンクアンドモチベーションへ入社され、2010年には中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に当時最年少で就任されます。複数の投資先を上場に導き、その後2018人に取締役に就任されました。
 同じく2018年にオープンワーク株式会社(旧ヴォーカーズ)に出資し、取締役副社長を兼任されます。国内最大級の社員クチコミサイトOpenworks(旧Vokers)を展開され、2019年に退任されます。その後、2020年に「ナレッジテクノロジーで人の可能性を解放する」をミッションに株式会社ナレッジワークを創業され、現在代表取締役を務められており、R-25などキャリア関連メディアへの出演も重ねられています。

読み方解説

各章はMethod(法則)ーEpisode(具体的事例)ーAction Checklist(チェックリスト)で構成されています。まずはMethodを読み込み、その理解を深めるためにEpisode、さらに実働させるためのChecklistという目的の違いを抑えて読み進めると良いと思います。
また、巻末にはそれぞれの学術的背景がまとめられています。理解を深めるため、他者へ相談説明するために役立てられると思います。

ポイント解説「ここを読め!」

①Aim(目標設定)の法則「旗を立てろ!」

 ー目標を確実に達成するのが良いチーム?

 チームと似た集団にグループという集団が存在します。両者の違いは共通の目的が存在するか否かにあります。この章ではチームとして大切な目的・目標設定について整理されています。
 日本では学校教育などを通じて形成された基盤としてテストで良い点を取ること、スポーツで勝ち負けを競うことといった競争を前提とする目標達成を目指していく習慣が身についている人が多くいます。しかし、ビジネス現場においては与えられた目標をクリアする競争だけでは不十分で、適切な目標設定ができることが大切になります。
 ビジネスにおける目標設定は時代とともに変化してきました。かつて高度経済成長期には「安くて良いものを早く提供する:という徹底されたサービス提供の勝ちパターンが存在していました。その中で定着した目標が行動目標です。どのような行動を取れば結果が出るかが明確であり、大切なことは漏れなく遂行することにありました。

 しかし環境の変化に合わせてビジネスにおける勝ちパターンも変わっていきました。同じ行動のみを繰り返すだけでは望む結果に届かない環境になったと言えます。その結果、同じ行動を繰り返すのではなく行動はある程度個人の裁量で選択し、重要な指標は成果で導くMBO(Management By Objective)=成果目標へと変わっていきます。

 さらに現代は加速し、創出される成果だけでなくその先にある実現すべき目的や意義までを含めた目標設定OKR(Objective and Key Result)が普及してきました。ひたすら同じ行動を繰り返す目標ではメンバーは行動の奴隷と化し、成果だけを追求する目標では数字の奴隷と化してしまう現代、なぜやるべきか?何のためにやるのかといった意義目標こそが重要視されるように変わってきました。チームにおける目標設定についてもまずは意義目標を抑えておくことが大切になります。

②Boarding(人員選定)の法則「戦える仲間を選べ」

 ー人が入れ替わらないのが良い組織?

 チームと一言に言っても、取り組む内容や、目指す目標、果たす使命までそれぞれです。それは人員選定においても同様でそれぞれのチームに適した選定が存在します。

 かつての職業観・キャリア観からいまだに根強いのが「新卒一括採用・終身雇用」で作られた固定化の組織風土ですが、次第にその流れも変化してきています。個がキャリアを切り拓く時代に突入し、プロジェクト毎に外部から人材を登用する企業も少なくありません。場合によっては新陳代謝を促す入れ替えや、スキルに合わせたメンバー選定も必要になってきます。

 多様性の観点においても考える必要があり、個性を尊重することが大切だと言われている現代においても人材が連携する範囲が狭い場合には必ずしも多様性を重視したメンバー選定が最適とは限りません。トレンドではなくしっかりとチームの向き合う業務を分析した結果に合わせて最適な選択をすることこそが大切になってきます。

③Communication(意思疎通)の法則「最高の空間をつくれ」

 ーコミュニケーションが多ければそれは良い組織?

 コミュニケーションの量だけで組織の良し悪しを決めるのはリスクがあります。むしろコミュニケーションコストが多すぎることは逆効果であり、それを左右するのはルールの量であるという内容です。チームで活動していく上でルールは切っても切り離せない存在ですが、適切な量で適切な範囲に設定することがコミュニケーションを最適化してくれるコツと言えます。基準を明確にする必要がある(迷わずに前進できる)範囲にルールを設定し、それ以上の細かな部分をコミュニケーションで担保するといったバランスが理想的です。

 また、コミュニケーションは感情によって阻まれることがあるものです。量だけなく、「誰が」「どのような場で」と言った環境面に配慮してやり取りを意識することでその質は高まります。本著の中ではその判断軸になるモチベーションタイプの解説も行われています。

④Decision(意思決定)の法則「進むべき道を示せ」

 ーみんなで話し合って決めるのが良いチーム?

 民主主義という言葉に代表されるように、合議こそが絶対的な正解という思考にはリスクが存在します。確かに合議はメンバー自身が意思決定に関与するため納得感は非常に得やすいですが、反面最も時間がかかる方法でもあります。対して、独裁はスピード感がありますが意思決定者以外が最終的な決断に関与しないため納得考えられにくい、現代に見合っていないのではという声にもつながります。メンバーの主体的な関わりを引き出すために合議を選択することが最適な場面もありますが、時に独裁も良い選択となる場合があります。その選択ができるようになるためには、独裁を行う意思決定者が以下のような影響力の源泉を日常的に意識しておくことで意思決定の成功率は上昇します。

【独裁者が持つべき「影響力の源泉」】

・専門性:すごいと思われる技術や知識を持っていること

・返報性:ありがたいと思われる支援や関与をしていること

・魅了性:素敵だと思われる外見的、内面的魅力を有していること

・厳格性:怖いと思われる規律や威厳を持っていること

・一貫性:ぶれないと思われる方針や態度を持っていること

麻野 耕司 , 2019 , 167-168

⑤Engagement(共感創造)の法則「力を出しきれ」

 ープロはモチベーションに左右されない?

 モチベーションには「ある・なし」に加えて「高い・低い」が存在します。これはプロもアマチュアも関係なくパフォーマンスを左右します。チームに対して貢献しようとするモチベーションを人事領域ではエンゲージメントと表現します。このエンゲージメントを高めるためには気合・根性ではなく以下の4Pの法則を抑えることが重要です。

【エンゲージメントを高めるための4P】

1:Philosophy:理念・方針

2:Profession:活動・成長

3:People:人材・風土

4:Privilege:待遇・特権

上記はいずれも重要なポイントですが、③にも通ずる点ですがチームの資源は有限です。全てを高めるには相応の規模でコストが必要になってくるため、戦略的に資源分配をする必要があります。
個人においても自分が所属する組織(例えば就職活動や転職活動時の選択など)いついては、漠然とした共感ではなく具体的にどのような点に共感したのかを追求する時代になっています。チームに適した人材を確保するという意味でも、カラーを出せるエッジの効いた4Pの比率を考えることが大切になります。

まとめ

 さて、今回ご紹介した「THE TEAM 5つの法則」ですが、タイトルからの連想でこれだけやれば全てうまくいくという短絡的な思考では読み物としての価値は最大化されないと思います。チームをマネジメントする上で必要な判断の軸を持つための教科書に近い存在でしょうか。
 本記事では紹介しきれていない具体例や、法則の学術的根拠も細かく記載されているため、日々のマネジメントに悩んだ際に振り返るということでも価値を発揮する一冊です。

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