リーダーの仮面「いちプレーヤー」から「マネージャー」に頭を切り替える思考法

リーダーの仮面「いちプレーヤー」から「マネージャー」に頭を切り替える思考法

はじめに

総評

識学の考え方に基づく思考法が「ルール」「位置」「利益」「結果」「成長」の5つのポイントにて整理されています。
リーダーになりたて、これからリーダーになる方をメインのターゲットとしてイメージされていますが、リーダー以上の階層には総じて学びの多い一冊になっています。
以下の読了スタイルにも記しますが、「固定概念は一度置いておく」が肝です。

オススメの読み方

序章にも「常識を取り払って読んでください」と記載されていますが、「こうあるべき」というこれまでの経験や考えは本書を読み進める時間においては一度脇に置いておくことをお勧めいたします。また、読み始める前に「識学」という企業について満タンでなくても十分ですので大枠の知識(事業内容・特徴など)を持たれることも重要ポイントです。

こんな方にオススメ!

・新たにリーダーになられる方

・リーダー育成に思い悩んでいる方

・マネージャーを目指す上で自身のリーダーシップを見直したい方

・上司や経営層が識学を学んでいるor導入しているが自分はいまいち理解できていない中間管理職の方

著者紹介

著者は株式会社識学の代表取締役である安藤広大さんです。
早稲田大学では超強豪であるラグビー部に所属し名将:清宮克幸監督の指導を受けます。
その後、NTTドコモ→ジェイコムホールディングスとキャリアを重ねられ、
2015年に株式会社識学を設立されました。
コンサルティング実績は2000社を超え、2020年にはバスケットボールBリーグの福島ファイヤーボンズを買収しスポーツビジネス現場にも参画されています。

ここで、お勧め読了スタイルにも記載させていただいた通り、
本書を読み進める上では「識学」を最低限のレベルで理解しておくことが有効です。
以下に簡単にまとめます。

識学とは

生産性が高い組織運営を実現するためのマネジメント理論であり、その理論を用いて企業・組織のコンサルティングを行なっている企業が株式会社識学です。
識学の特徴は、人間の意識構造という普遍的なものに基づくアプローチとされており、いわゆるマインドセット・モチベーション理論などとは別の位置にある考え方として整理をすると良いかと思います。
もちろん、上記のようなジャンルにもリーダーシップにまつわる良書は数多くありますが、この本を読むと決めた際には一度傍においてまっさらな状態で情報を入れていくと良いと思います。

独自の立ち位置で多くの企業・組織を支援され、実績・規模共に拡大を続け設立からわずか3年11ヶ月でマザーズ上場を果たしています。そのエッセンスが存分に詰まった一冊です。


ポイント解説「ここを読め!」

①「ルールの思考法」

 自由な社風と聞くと、一見ストレスがなく伸び伸び働くことができる素晴らしい環境だとイメージをされると思いますが、全てにおいてそうではないと記されています。
明確なルールが不足していたり、「自由」の言葉に隠れて職場とは仕事をする場所であるという共通認識の欠如や感情の摩擦を引き起こし生産性を落としかねないリスクも潜んでいます。リーダーはこの「ルール」について正しく理解し、メンバーを率いることが大切になってきます。

 本書の中でルールは「姿勢のルール」と「行動のルール」に分類されるとされています。ここでは「姿勢のルール」について簡単に説明させていただきます。

「姿勢のルール」:誰でも守れるものということが絶対条件であり、このルールは意識すれば誰にでもできることであり、能力によるできる・できないが存在しないとされています。設定におけるポイントは、自分を主語にしたもので、誰が何をいつまでにやるのかを明確にしたものです。この点が曖昧になると、見えないルールを探り合ってしまい疑心暗鬼を生み出してしまう要因になります。
例)挨拶をしましょう、会議の3分前には着席しましょう etc..

 このような姿勢のルールを統一しリーダーは徹底してメンバーに守らせるようにします。その結果、メンバーには「組織の一員なんだ」「この輪の中にいるんだ」という意識が育つようになってきます。
守らせる過程において注意する点は、特例を安易に作ってしまったり、嫌われたくないあまりに中途半端な表現をしないということです。ルールではなく人間関係に沿って指示を聞く・聞かないのバロメーターを作ってしまわないように正しく姿勢のルールは言語化する必要があるとされています。

②「位置の思考法」

 近年、組織の在り方論においてはティール組織やホラクラシー組織に代表されるように数多くの新しい組織の概念が流行しています。私自身も新しい組織づくりの勉強として良書に出会った経験がありますので前提としてそのような組織を否定するものではなく以下を記載させていただきます。

 新しい組織の概念は有益な情報である反面、日本の多くの組織は引き続きピラミッド型の組織形態を採用しています。本著ではそのピラミッド型組織に適したマネジメントを抑えるという趣旨で記載がされています。

 よくある誤解の一例として、ピラミッド型組織は上席への確認事項が多く決済までに時間がかかるという考え方がありますが、この点においてもリーダーが組織内の自分の位置、決定する責任範疇を正しく理解することで速度を早めることができると解説されています。

 「自分の位置」という考え方についてですが、役割が変われば見える景色が変わるという表現で紹介をされており、ピラミッド構造で言えば役割が上位の階層になればなるほど見える景色とその広さが広がっていくということになります。
加えて、高い位置にいる人は未来を見据えて決断し行動する責任を負うとされています。
リーダーが正しく位置を理解するということは目の前の利益だけを追求するプレイヤーとしての思考から離れ、未来の利益を求めることができるようになることと表現されています。

③「利益」の思考法

 人間の行動のきっかけは細部まで突き詰めると「自分にとって利益があるか否か」であり、本当についていきたいリーダーというのは部下自身に対して利益を与えてくれる存在とされています。

 利益について考える上で重要になってくることが、組織と個人はあくまでセットであるという前提です。どんなに優秀な人も会社員である以上は「〇〇社の××さん」という覚えられ方をするように、多くの人は組織やコミュニティに貢献できているかどうかで対価を獲得しているということです。
 
 上記においてのポイントは「会社の利益のために働く」という思考を浸透させること、そして部下個人が求める利益(例:楽しく働きたい、充実した福利厚生が欲しいなど)が会社の求める人材としての成長という観点の利益と利益相反を起こしてしまわないように進めることにあります。また、組織やコミュニティに貢献することで対価を得るということは、個人を蔑ろにしているということではなく、組織の利益につながることがその先にある個人の利益につながっていくという順序を適切に抑えることも重要になります。

④「結果の思考法」

 レストランに行き、どんなに熱心に調理工程の説明をされても美味しくなければリピートはないでしょう。この項目ではプロセスではなく結果こそが大切であり、評価されるものという考え方が整理されています。

 評価というものはどれだけの対価を得ることができるかで決まります。つまり、他者から得られるものに紐づいた概念ということになります。レストランの事例からもわかるように、自己評価という考え方は他者評価を獲得した先にしか価値を持たないと考えられます。

 それでは会社・組織における他者評価とは何かという話になると答えはシンプルで「上司に求められる結果を出せる人間」とされています。また③で紹介した部分にもつながりますが、メンバーの中にはクライアントや社会の評価を優先していこうとするばかりに会社の未来に対する視点が不足している場合があります。リーダーは会社の未来を見据える位置にいる役割であるため、長期的な目線を持ち続けることが大切になります。

 また、「プロセスは評価しなくて良いということ?」という疑問が生じるかもしれませんが、ここでの答えは「プロセスは評価せず結果のみを評価する」です。本著ではプロセス管理の起源は子育て・教育現場におけるその効果の優位性と紹介されています。頑張ったから良くできたね or 次はきっとできるねという声かけが成長を促進させたことは事実であるが、ビジネス・会社という場面に当てはめる必要はないとしています。残業をしている姿勢など結果以外の部分に部下が注力するようになってしまい、結果につながらず組織が弱体化していくなどプロセス評価の弊害についても記載されています。

 結果のみを評価するスタイルはコロナ禍により急激に広まったリモートワークスタイルとの相性も良く、定例のMTGで目標を確認し、次回のMTGで結果を報告させ、評価するというシンプルな流れが出来上がり物理的にプロセスを見る機会が減ったため、姿勢だけ見せ結果が伴っていなかった人たちは苦労をするようになり、リーダーも余計な視点を持たずに評価ができるようになるとされています。

⑤「成長の思考法」

 会社・組織において人が成長するためのステップを本著では以下のように紹介しています。
1:リーダーは「結果」に対して評価をする
2:結果と評価のギャップを認識し、メンバーにも認識させます
3:次の目標を「変えるべき行動」と一緒に設定します
4:その「結果」と「評価」のギャップを埋めていくことが成長です。

 このステップを進める上で大切なことは、成長の速度には個人差があるという点です。
複数人の成長を見つめていく中で場合によっては結果がなかなか出ずに出遅れるメンバーもいるかも知れません。
その際に、感情に寄り添って鼓舞するような関わり方や、プレイヤー時代を思い出して自身の背中で見せるようなリーダーシップは必要ありません。成長速度が早いメンバーがいれば自ずと周辺のメンバーの速度も引き上げられていきます。鳥の群で考えるならば、先頭で進むのは成長速度の速いメンバーであり、リーダーはもっと高い位置から俯瞰して見る位置を取ることが重要であると記されています。

この「成長」はプレイヤーであった頃の自分を部下たちが遥かに超えていく瞬間を感じられる最大にして最終のゴールであるとされています。

まとめ

さて、今回ご紹介した書籍は安藤広大さんの「リーダーの仮面「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法」でした。2021年上半期注目の書籍の一冊でもありましたので様々な媒体から情報収集されている方もいらっしゃると思いますが、総じてこれまでの先入観や「こうあるべき」といった気持ちを一度脇に置いて、この考え方を勉強するというスタンスで楽しんでもらえると思いますし、冒頭にもオススメに記載しましたが上司や経営層が識学を導入している中間管理職の方々は必読です。
独特の言い回しで言い切る場面も多く、プレイヤーからリーダー→マネージャーと進んでいく上での覚悟と勇気を与えてくれる一冊でした。

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