苦しかった時の話をしようか

苦しかった時の話をしようか

はじめに

総評

 日本を代表するマーケターである著者が就職活動を迎える自身の子どもに向けて綴ったメッセージが元になっており、ビジネスマンと父親両者の顔が存分に発揮されいます。未来のキャリアの不安や困難に直面した際、ただ呆然と過ごしたり向き合うことから逃げ出してしまうことが無いよう、悩みの解き方・答えの探し方を丁寧に紹介されています。娘さんに宛てた文章が元の構成となっているので回顧する表現や、独特の比喩など時にリラックスさせるような展開もあり最後まで満喫できます。
 若手向けのカテゴリとしましたが、キャリアに悩む全ての世代の方へおすすめの一冊です。

こんな方にオススメ!

・あらゆる「キャリア」に悩む全ての方

・これから迎える社会人という時間に不安のある学生の方

・会社や組織に依存せず、自身で選択するキャリアを描きたい方

著者紹介

 著者の森岡毅さんは、株式会社刀の代表取締役CEOで日本を代表するマーケターです。兵庫県伊丹市出身で神戸大学経営学部を卒業後、P&Gに入社されヴィダルサスーンなどのヘアケアブランドマネージャーを歴任され、その後当時のCEOグレンガンペルのヘッドハンティングによりUSJに入社します。立て続けに革新的な取り組みを導入〜実行し、窮地にあった経営状況をV字回復させた事例はあまりにも有名です。

 現在は2017年に創業された株式会社刀において「マーケティングで日本を元気に」という大義の元で数々のプロジェクトを推進されています。

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ポイント解説「ここを読め!」

①やりたいことがわからなくて悩むということ

 社会においてこれから先の人生を作っていくために大切なことは、自分自身にとことん向き合い「軸」を見つけることです。しかし、どうしても日本人は相対的な評価ばかりに意識が集中してしまう傾向があります。自分は他人より何が優れていて、何が劣っているのかという優越感や劣等感を前進するためのガソリンにしているということです。本著では、自分の中の軸に沿って選択していくことでガソリンを満たしていくという考え方を紹介されています。

 前半部分では就職(転職)活動へ向かう過程での「軸」を見つける考え方が整理されています。”やりたいことがわからない”という言葉の本質は、経験がない、知識がないということではなく、自身の中での軸が定まっていないことに起因しているとされています。軸はライフステージとともに変化をしていくということを前提にして、今の自分の価値観の中で一生懸命に軸を考えてみることで、やりたいことにつながる道筋が明らかになっていきます。

 また、就職活動のステージにおいては「会社と結婚するな、職能と結婚せよ」という表現が使われています。時に、この会社の社風が好き!という理由が強く進路を決定づけてしまうことがありますが、会社はどうしても従業員の考える軸とは無関係の利害で存在するという事実があります。M&A、経営層の刷新など大幅な社風転換も時には避けられません。対してスキルは、自身が健康である限り相対的に持続可能な個人財産であり、会社・組織に依存せず共にあるものです。せっかく向き合って見え始めた軸を活かすためにも自身のスキルが高まる環境か否かを考えなさいという内容になります。

②人生の目的を考え、強みを把握する

 自身の人生の目的(目指すゴール)を考える上で初めから具体的なゴール設定が難しくあやふやになってしまう or 考えることを避けてしまう場合があります。そんな時に役に立つ考え方が「どんな状態であれば自分はハッピーだろうか」という理想状態から発想を始めることです。理想の状態をイメージしてその理想を実現するために必要な「こと」はなにかという階層を複数掘り下げていくことで十分条件を始まりに必要条件を見つけていき、段々と具体的な情報に仕上げていくようになります。

 自分の強みという点においては、自身の社会における関わりの中で気持ち良かったこと、自身が好きなこと、他者からみてイキイキしていると見えることなどが参考になる情報であり、それらを動詞で書き出して見ると良いヒントになります。更に書き出した動詞を分類して整理する参考情報として、ビジネスパーソンとして重要なコンピテンシーを紹介しています。

・Thinking:考える力/戦略性が強み
→問題を解くのが好き、知ることが好きなど

・Communication:伝える力/人と繋がる力が強みになる
→人と会うことが好き、SNSで多くの人と繋がるのが好きなど

・Leadership:変化を起こす力/人を動かす力が強みになる
→何かを達成することが好き、大きな変化を起こすことが好きなど

書籍の中ではこれらコンピテンシーの特徴・傾向についても詳しく紹介されています。自分が何者であるかの整理は職能を積み上げていく土台になる重要なスタートでもあります。

③苦しかったときの話をしようか

 本書終盤は、著者から娘さんへ贈る自身の経験に基づいた「苦しかったとき」の話が記載されています。細かな紹介をこの記事で行うことはナンセンスであるとすら感じています。

 数々の輝かしい実績を挙げられ、日本を代表するトップマーケターの森岡さんが新卒入社から数年で経験した苦労、また大きな役割を任された第一歩で向き合った苦労、世界規模の事業での苦労が丁寧にそして詳細に記載されています。それぞれのシーンに重ね合わせながら、その苦労を乗り越えるための弛まぬ努力が読み手を奮起させてくれる、胸に響くパートになっています。

まとめ

さて、今回ご紹介した「苦しかったときの話をしようか」ですが、トップマーケターの顔と父親の顔を最後まで両輪で走らせながらの展開がありました。働くことの本質、それに伴ったキャリアの考え方が丁寧に記されており、キャリアに悩む全ての方へオススメの一冊です。

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